少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ ≪増補改訂版≫

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

暴力場面がたくさん描かれていた。なのに、すごく悲しくなる、気分が暗くなる。
小説で読む暴力シーンは、後の場面ではたいていは救われるような話に繋がる。続くシーンがあるからこそ楽しめるのだろう。
この本では、誰も救われていない。被害者は戻らない。遺族も事件の発生からずっと苦しむ日々が続く。加害者や加害者の家族は、苦しんでる人も居るのかもしれないが、作中ではそのような人はとても少なく見える。
加害者の様子を、この作品を通して見た限りでは少年法やその他の法律だけでは被害者の発生は食い止められないのじゃないだろうか。加害者も極少数の人以外は、特別に異常な人が多いとは思えない。謝罪の気持ちよりも自己保身に囚われている。自己保身をするために、防衛するために、謝罪をしているポーズをとっているだけだ。たいていの人は自分を守るために「反省しています」というポーズをとるだけなのだろうか。被害者の人がそれで、多少なりとも心が慰められれば良いのだけど。
作品の冒頭でポーカーを例えとしてしている

 本書でとりあげた二つの事件では、ロイヤルストレートフラッシュが揃ってしまいました。
 加害少年たちの多くは、飛び抜けて凶暴だったわけではありません。生まれてから一度も喧嘩をしたことのなかった少年も含まれています。
 そんな子であっても、「恐怖のポーカー」で役が揃えば、人の命を奪いうる。

とある。事件の再発をさせないためには、カードが揃わない状態。環境を作ることだと作者は伝えたいのだろうか?

はじめに
第一部 少年リンチ殺人 「ムカつくから、やっただけ」
序章 父よ母よ息子よ
第一章 隠された現場
第二章 この世の修羅
第三章 逃走と死と
第四章 親である罪
第五章 終わりなき喪
終章 知られざるまま
第二部 また少年が殺された――続発するリンチ殺人
第一章 子の無念
第二章 連鎖する暴力
第三章 一万円の命
第四章 軌跡の果て
第五章 無間地獄
第六章 暴発の理由
第七章 悪夢の断片
第八章 無知という罪
第九章 うちの子に限って
第十章 更生のために